どうしていつも授業中寝ていた子が急に勉強をするようになったのか…

彩北進学塾の卒塾生は200人を超えておりますが、当然さまざまな生徒がいました。浦和高校に合格するような生徒もいれば、この子高校に行けるかな?と思うような生徒も過去にはおりました。

そして、このブログでも何度かある生徒について書いているのですが、1年に1度くらいの割合で紹介しております。

こんな生徒です。

中学1年生の途中で入塾してきた女子で、塾には親に無理やり入れられて、勉強なんかよりも部活動命!くらいの勢いで、部活動がハードで授業中に良く寝てしまっていました。

起こすと「眠いんだよ~」と機嫌が悪くなり、勉強を始めたかと思うと分からない問題が出るといらいらして、説明してあげても「やってもどうせわからない」と聞く耳を持たず。テスト前だけ慌てて少し勉強をしますが、結局ワークなども終わらずに最終的には怒りながら解答を写して終わらせる感じでした。

中2になるとさらに大変でした。

部活動はさらにハードになり、反抗期もあったので「勉強なんかやっても意味ないし」と言うのが口ぐせ。眠気がとにかく強いので、知らないうちに寝てしまう。

だいたい中間・期末テストでは5教科で250点くらいでした。中2の終わりのころになり、高校は部活で行くから私立でと言いだし、我々スタッフもそのほうがいいなと心の中で思っていました。

中3になってもあまり変わらず…ただ1点、欠席だけは絶対にしなかったのが唯一良かったところ。とはいっても授業の半分くらいは寝ているのでうーんと言った感じ。

もちろんこういう生徒は初めてでしたし、たまたま凍学年が人数が少なかったので、何とかなっていましたが…

そして中3の5月の終わりころです。

この生徒が突然真面目な顔で話しかけてきました。

「○○高校へ行くことにした」と。

それは公立高校でしかも偏差値が58程度の高校。

もちろん私の第一声は「どうしたの?本当に???」といった感じで…

理由はいくつかあったわけですが、

・大学に行きたい

・その高校の制服が着たい

・親友と同じ高校へ行きたい

・好きな子ができた(その子と一緒の高校に行きたい}

といったものでした。

理由は分かったものの、まず何よりも足りないのは「基礎学力」。数学の計算から漢字までほぼできず。英語は単語は覚えていたものの文法は知識ゼロに近い状態。

ところが理由はどうあれ、彼女は「本気」だったのです。本気でその高校へ合格するつもりになっていたわけです。ただ数週間後には部活の最後の大会でしたので、部活動も大変だったわけです。部活を引退したら勉強するからと言って、部活動に全力で取り組んでいました。

そして、部活動最後の試合の日、つまり引退した日です。早速学校から帰ってからすぐに塾に来ました。今日から超勉強する、と言って、その日から毎日早い日は16時30分に、遅くても17時30分には塾に来て、授業がある日もない日も23時過ぎまで勉強しました。特に夕方は小学生しかありませんから、分からないところはどんどん質問に来て、夜も空いている先生や休み時間の時に分からない問題はどんどん質問して、何度も解いて納得するまで勉強していました。

あれほど「勉強なんて意味があるの?」と言っていた生徒が、「ここがわかるまで帰らない」というようになっていたのです。

モチベーションややる気というのは凄い力になるもので、どんどん吸収していきました。北辰テストの成績も回を追うごとに上昇していくのみ。もちろん今までやっていなかったわけですから当然といえば当然ですが、すごい勢いで上がってきました。

1学期の期末テストではまだそれほどでもありませんしたが、夏の講習とお盆の特訓もすべて受講して、朝から夜遅くまで塾にいる感じで勉強しました。塾が休みの日は図書館です。図書館で朝から勉強したのです。

2学期の中間テストでは、400点に迫る勢いでした。

北辰テストの結果も4月の段階では偏差値が43くらいでしたが、10月には50を超えてきました。

それでも我々はちょっと厳しいかなと内心思っていながらも、本人のやる気に応える形で、授業前後も誰かしらが指導をして応援していきました。

2学期の期末テストでは、430点。

12月の北辰テストではなんと偏差値58。

これはもしかしたらと思いました。

その後も受験まで勉強は一生懸命続けました。とにかく絶対に合格したいんだという気持ち。何が何でも受かってみせるという強い意志。

この子を見ていて、「何かのきっかけがあると人間てこうも変わるものなんだな」と思いました。そして、この経験から私は塾で子どもたちと接するときに、どんな点数であってもいくらでもその気になれば上がるんだということと、できるだけ勉強しようと思えるようなきっかけを何かつかめるようにしてあげようと決めたわけです。将来や未来のことについて考える授業や雑談をしたり、ふだん接するときに何がきっかけになるかわからないのでいろいろな話をするようになりました。

彼女は勉強する中で「自信」をつけていきました。

よって、受験でも合格すると確信に近いものを持っていました。

勉強が苦手だったりできない生徒に足りないものを彼女はすべて取り戻したわけです。

「基礎的な学力」「自信」「モチベーション」「やる気」「継続する力」などですね。

結果的に受験は失敗になるのがドラマではないところ。これで合格していれば感動的なのですが、それでもそれ以上に感動的だったのです。

開示得点を見ると、合格した生徒よりも点数は高かったのですが、原因は内申点です。最初に書いたような理由から中1・2年生の内申点はお世辞にも良いとは言えません。良いと言えないどころか悪い過ぎたのです。

別の高校に行くわけですが、その高校に行くことが決まったときの彼女はとてもすがすがしくやり切ったという感じがしていました。

そして、何が感動したかというと、この生徒は最後に私に残してくれた言葉です。

「私の成績は、この塾にいる中2以下の人たちに見せてあげてください。通知表も北辰テストの結果も中間や期末テストの結果も全部見せて、やっぱり中1からちゃんと点数や成績を取らないと3年から頑張っても間に合わなくなる可能性があることをこれを使って説明してください」というものでした。

身をもって内申点や早くから頑張ることの大切さを経験した彼女が同じような失敗をしてほしくないといって私に残していった成績表の数々。

その言葉の通り、それから毎年保護者会ではこの成績などを使って話をしています。そしてそのたびにその子を思いだすと涙が出てきます。悔し涙なのか何の涙なのか私自身がよくわかりませんが、自然と出てくるのです。これを書いている今もそうですが・・・

もちろんこの生徒だけではなく他にもたくさんの経験があるわけですが、どの生徒もそれぞれでドラマがあります。1人でも多くの生徒が勉強を通して人生を変えるきっかけをつかんでほしいと思っております。

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